ねぷた絵

津軽デジタル風土記 ねぷた見送り絵プロジェクト

 弘前のねぷた絵の素材が多く、江戸時代後期の絵本類、特に葛飾北斎らの画にもとづくことはよく知られているところであり、その第一人者であった竹森節堂(一八九六〜一九七〇)以来、とりわけ北斎やその弟子が描く水滸伝や伝奇小説の挿絵が多く使用されてきました。長谷川達温(一九二一〜一九八九)も、やはり江戸時代の小説挿絵から着想を得ていることが、残された作品や下絵の分析から明らかになっています。
 今回のプロジェクトは、そのようなねぷた絵作成プロセスのDNAを継承し、新たな見送り絵を令和の世に提案することが出発点にあります。ここに掲載するねぷた見送り絵三〇点は、全て川村岩山氏の手により、江戸時代の読本(よみほん)と呼ばれる伝奇小説に描かれた女性たちを、デジタル画像から描き起こしたものです。ねぷた絵の原点に返り古典的な素材に基づくことが、現代においてかえって新しさをもたらすのではないでしょうか。
 何の脈略もなく古典を現代化するのではなく、地域が有する個別の文化の文脈を理解し、それに即した上で企画化したところに、アカデミックな機関が地域の観光に関与する意義があると思います。温故知新を文字通り実践した作品群を、元絵(一部のみ)とともにご堪能ください。

1笠屋三勝
2葎戸
3野上花子
4薄雪姫
5寧王女
6大姫
7藤浪
8花児
9白糸姫
10貞児
11幼女菖蒲
12韓衣
13妖婦梢
14狭高
15光明皇后
16兇婦鏨
17清道禅尼
18千代囊媛
19松嶋局
20松嶋局【遺言の図】
21賤櫛
22
23菅根
24滝夜叉姫
25佐用媛
26阿旬
27舞鶴姫
28安良子
29唐糸
30総角