阿旬(おしゅん)

歌川豊広画・曲亭馬琴作『旬殿実実記』(文化5年・1808刊)より 国文学研究資料館蔵

 呉服屋の娘であったが、大鷲にさらわれたり、猿に養われたり、数奇な運命をたどる。孝女であり、主家の好色な娘・お筍とは好対照をなすが、幾度も交錯する。本作は浄瑠璃『近頃河原達引』の登場人物や猿回しの設定を用いつつ、室町期の武家の世界を舞台に、宝刀詮議なども織り込む。