漆木家伝書

書名読みうるしぎ(しつぼく)かでんしょ
所蔵弘前市立弘前図書館八木橋文庫
著編者成田五右衛門(但し、斎藤幸右衛門の写し)
写刊年次寛政十三年(一八〇一)二月
寸法縦二四・五×一七・〇糎
丁数二九丁
備考蔵書印「八木橋」
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解説

 この資料は、弘前藩の漆栽培の技術指導書である。筆者の成田五右衛門は、代々漆栽培を手がけてきた成田家の五代目成田五右衛門惟宣(なりたごえもんこれのぶ)と推定される。成田家は初代五郎右衛門宗全(ごろうえもんそうぜん)が南都奈良において漆栽培の技術を学び、父俊前(しゅんぜん)が弘前藩に仕えていたため、津軽に戻り、四十余町歩の土地を開墾し漆栽培を始めた。しかし一人で漆栽培を行う限界を知り、寛永元年(一六二四)に藩に漆栽培の利を説き、自費で一年間に一万本、五年間で五万本の漆を植え付けるので、弘前城内の草地を培養地として長く借用したいと願い出て許可を受けた。その際、二代藩主津軽信枚(のぶひら)から、成木した木にかかる役銭(税金)の免除と成木から取れる生漆(きうるし)の売却自由の特権を得ている。以後、領内では漆栽培が盛んになり、寛永七年(一六三〇)には領内一三地域で約五万五千本の栽培数となった。その後、貞享四年(一六八七)の「検地水帳」では、約三三万本弱の漆が書き上げられている。