天狗の内裏

書名読みてんぐのだいり
所蔵弘前市立図書館
編著者未詳
丁数上・二五丁、下・二〇丁
写刊年次未詳(無刊記)
寸法縦二四・七×横一六・九糎
備考丹緑本の版本。「渋江抽斎」の印あり。
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解説

 本書は、幼少期の源義経が鞍馬山の天狗に兵法を習うというお話を、挿絵入り丹緑本で出版した本である。著書は未詳、刊行年も未詳。丹緑本という版本であることから、寛永から万治頃の刊行と考えられる。
 『天狗の内裏』の内容は、源義経が鞍馬寺で修行していた時代、鞍馬の山奥にある「天狗の内裏」において、大天狗(天狗の王)に兵法の秘術を学び、その後、大天狗の案内で地獄と仏界をめぐり、大日如来になっていた父義朝に会い、源氏の未来を聞くという話である。
 『天狗の内裏』の諸本については様々な研究があるが、弘前市立図書館本は、「丹緑本(たんろくぼん)」と称される、稀少な本であることが注目される。
 丹緑本とは、寛永年間(一六二四~一六四四)から万治年間(一六五八~一六六一)にかけて版行された、墨摺りの挿絵に特色のある彩色を施した版本のことである。丹(赤)・緑青・黄の三色が用いられ、特に丹・緑が多様されていることから、「丹緑本」の名が付けられた。出版の中心が上方であった時期の制作のため、上方版に限られる。色付けの方法は、綺麗に塗り込まず、筆任せに色を載せたような、筆彩の本である。主に、軍記物、お伽草子、古浄瑠璃の正本などに作例が見られる。本書もその一つである。
 また本書には、「弘前医官渋江氏蔵書記」という朱印が押されている。「弘前医官渋江氏」とは、弘前藩の侍医であった渋江抽斎のことで、渋江氏の旧蔵本と知られる。

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