参勤道中記

書名読みさんきんどうちゅうき
所蔵個人蔵
著編者未詳
写刊年次寛政期(一七九〇年代)
寸法縦一三・四×横一九・六糎
丁数一一八丁半
備考一部欠損、奥見返しに蔵書印「何似」(朱印)
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解説

 本資料は、弘前藩津軽家の参勤交代の下り道中の道筋を描いた絵図である。江戸から始まる七二〇㎞の旅程を定型的な絵画描写で描き、地名と注記を付している。形態は横長の折本で、全長は約四六・五m、一一八丁半を数える。現状は桐製の箱に納まり、題名は箱書きの「道中記/参勤/全」による。箱があつらえられた時期は不明である。
  絵図の冒頭には、江戸の新吉原町と浅草寺の遠景が描かれている。末尾は、弘前城から眺める「御城西の方/岩城山」の景で終わっている。
 矢立峠を超えると弘前藩領である。「御境の杉」が描かれ、幕を巡らせた「御休所」は、杉よりも久保田藩側に設けられている。碇ヶ関の御仮屋には、既に家老以下が詰めている。また、御目見(おめみえ)以上の御供には、この御仮屋でお菓子を下される。定型的な表現としての制約はあるが、この御仮屋にせよ、千歳山の長楽亭にせよ、平面図以外で描かれるのは珍しい。行列に歩調を合わせるように、弘前の町はずれの枡形まで続く松並木が、描写にリズムを感じさせて楽しい。行列はそのまま町を通り、城に入り、本丸の手前の馬出(うまだし)で岩木山に迎えられて、長い道中を終えるのである。