陸奥国津軽郡之絵図

書目読みむつのくにつがるぐんのえず
所蔵青森県立郷土館
著編者未詳
写刊年次貞享二年(一六八五)三月二十六日
寸法縦三九三・〇×横四八八・〇糎
備考紙本着色
木箱付属。縦六九・〇×横三八・五×高六糎
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解説

 本絵図は、裏書に「正保二乙酉年十二月廿八日差上 御公儀候控之写也 貞享二乙丑年三月廿六日」とあるように、弘前藩が正保二年(一六四五)に幕府に提出した、いわゆる正保国絵図の控図(ひかえず)を、貞享二年(一六八五)に写したものである。
 幕府に納められた全国各地の正保国絵図の正本(=清絵図(きよえず))は、明暦三年(一六五七)に発生した明暦の大火などにより失われ、現存していない。しかし、その正本と同内容で作製された控図は国元や江戸藩邸に公式文書として置かれた場合が多く、作成途中の下図とともに、国絵図正本の実態を知る上で重要なものであり、また、控図の写し等も同様であるといえる。
 幕府に提出した正本と、その控図を写した本絵図の関連性について確認してみると、まず、本絵図の記載内容や描写方法が、正保国絵図の作製に関して幕府が示した作成基準に基づいていることがわかる。また、国絵図と同時に作成・提出された交通情報に関する書き上げである「道帳(みちのちょう)」と照合することでも、正本との関連性をみることができる。弘前藩が慶安二年(一六四九)二月に作成した「津軽領分大道小道磯辺路并船路之帳」(弘前市立弘前図書館蔵 八木橋文庫)が、正保国絵図とともに幕府に提出された「道帳」の控えの一つとされているが、その道筋等の記述内容と本絵図の内容は一致するという。
 以上のことから、本絵図と失われた正本は、その記載内容・描写方法が同様であり、正本を忠実に写したものと位置付けることができる。