耕作口伝書

書名読みこうさくくでんしょ
所蔵弘前市立弘前図書館岩見文庫
著者一戸定右衛門
写刊年次元禄十一年(一六九八)成立・宝暦五年(一七五五)写
寸法縦二三・六糎×横一六・六糎
丁数十一丁
備考「福士蔵書」(朱印)
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解説

「耕作口伝書」は、元禄十一年(一六九八)二月、津軽領蒲田村(現青森県平川市)の一戸定右衛門によって著された、農事暦を中心とした農書である。弘前藩では四代藩主・津軽信政の治世下で大規模な新田開発が進められ、従来は耕作地帯ではなかった岩木川の下流域にも開発の手が及び、実収は大幅に増加した。藩政時代を通じて米の収穫量を増加する努力は、藩財政を保持し続けるためにも積極的に行われた。
 当時の津軽地方の主力品種は、「いわか」(「岩川」「岩が稲」とも)という晩生種だった。収穫量が多く、陸奥湾一帯や岩木川下流域でも作付けされたが、寒冷に弱く、元禄八年(一六九五)の飢饉で多くの餓死者を出す要因の一つとなった。
 元禄飢饉は、藩財政の維持を目指す藩の意図と、当時の市場経済の論理、さらには「成立」を目指す農民の多収穫への志向とが一体となって起きた構造的な飢饉であると考えられ、大きな影響を弘前藩領に残し、その克服がその後の弘前藩領の課題となった。
 課題克服の一つとして、蒲田村の一戸定右衛門が不作を回避するという視点によって編んだのが「耕作口伝書」である。