蝦夷地図  写一巻(軸)

書名読みえぞちず(うつし)
所蔵青森県立郷土館
著者古川古松軒(ふるかわ・こしょうけん)
写刊行年次天明八年(一七八八)年頃
寸法縦一四〇×横八七糎
備考紙本着色
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解説

 本図は、古松軒が天明八年に幕府巡検使随員として蝦夷地を訪ねた際に製作した、本州北端部から蝦夷地・千島・樺太までの原図の写である。 本図の図中にはかなりの分量の文章が書きこまれている。その文章の内容の多くは蝦夷地の地誌であり、松前渡海の様子、松前における交易、蝦夷錦の渡来、義経伝説、商船往来、等々である。それらは、古松軒が自ら百姓・町人から聞き出した庶民やアイヌたちに関する様々な情報が含まれている。
 本図は、蝦夷地(北海道)の形が南北に細長く描かれ、樺太もそれに対して極端に小さく、千島は列をなさないで、米粒をばらまいたような一塊の島々となっているという、現在の北海道・樺太の地図とはかなりかけ離れたものになっている。これは、松前藩士や歴代の幕府巡検使等により、松前氏の国絵図からの書写により数多く流布し、幕末まで一般に利用された、国絵図系蝦夷図と呼ばれる系統の図にみられる特徴である。但し、他の国絵図系蝦夷図と比べると、正方形かやや縦長に描かれている樺太が、本図では左側に傾いた平行四辺形となっている。また、岬や湾の出入りがかなり小さく描かれ、凹凸は他の図より少ない。また、古松軒が自ら調査した熊石から汐首岬の間も手が加えられ、正確さを増している。