青森実地明細絵図

書目読みあおもりじっちめいさいえず
所蔵青森県立郷土館
編著者川瀬善一
写刊年次明治二十五年(一八九二)五月二十一日
寸法縦七○×横九八・五糎(原資料の大きさ)
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解説

 この絵図は「実地明細絵図」の名が示すとおり、市街地の実際のありさまを、建築物の外観とともに詳しく描き記した絵地図である。中央の地図と、それ取り囲むように配置された多数の建築物のイラストで構成されている。
 中央に置かれた市街地図は、但書にみられるように、おおむねの位置と方向を記した概略図である。方角は北を下に、すなわち青森湾を下方に描いており、海側から町を眺める構図をとっている。地図の下に小さく描かれた「青森湾の真景」と題された一コマのイラストも同様に海側から青森の町を描いている。港を玄関口とする臨海都市を描く視点として自然な構図である。地図内の右手には発行の前年(明治二十四年九月)に開通した日本鉄道の青森停車場が記されるとともに、主要駅までの里程表が併載されている。また、下中央には桟橋が描かれ、全国主要港までの里程表と運賃表が併記されている。人と物の交通の便益をはかり産業の振興に役立てたいという編者の意図をみることができる。
 地図を囲むように配置された一二九コマの絵図には、当時の青森町内の建物の外観が簡略化されて描かれている。県庁、町役場、裁判所、学校、停車場などの公共施設が五コマ、製造業、小売業、旅館業などの商工業施設等が一二四コマ描かれている。後者については、業種(取扱商品)、屋号、所在(町名)、経営者名が併記されており、商工業案内としての用途と同時に、商業広告としての役割を兼ねていたものと考えられる。ただしすべての商業施設が描かれているわけではないことから、その選定の規準に広告料や掲載料の徴収の有無があったのではないかと考えられる。